根管治療 東京を狙う
例として、取り上げるのはTの「アンドン」です。
Tが行っている業務上の工夫は、「カイゼン」や「カンパン(看板)方式」など、世界共通のビジネス用語となっているものがありますが、「アンドン」もその一つです。
「アンドン方式」は、「可視化(見える化)」による業務改善の成功例としてよく取り上げられていますが、そもそも「アンドン」とは、Tの各工場の製造ラインに吊り下げられている掲示板のことです。
この掲示板には、各工程や機械の稼働状況がランプで表示されます(その様子が行燈に類似)。
これによって、工場の監督者だけでなく、働く者の誰もが現場のどこからでも、ラインの状況がわかるようになっています。
すなわち、「アンドン」という仕掛けHの導入により、製造ラインで問題が発生したという「淡略系コンサル」の智恵のエッセンスという事実、そして、それがどの工程あるいは機械で発生したのか、という事実は、ただちに告知され、工場中で共有されることになります。
「コンサルティング・ファーム」が提示するフレームワークや論点整理も、この「アンドン」と同じ効用を持つものと考えられます。
しかし、Tが本当にスゴイのは、この先です。
すなわち、Tでは、「アンドン」のスイッチを押す役割。
すなわち、ラインや機械の問題を発見する役割を、ラインの管理者だけではなく、期間工やアルバイトに至るすべての作業担当者が担っています。
また、作業員が「アンドン」を点灯させると、管理者や関係するラインのメンバーが集まり、即座に解決策が話し合われます。
つまり、Tの工場においては、①ラインの異常や問題の発見は、全作業員の責任であること②異常や問題の解決はチームの仕事であることという約束事が工場中に浸透しており、具体的アクションにつながる仕組みがピルトインされています。
それによって、製品の品質維持と工場稼動の効率性がもたらされているのです。
この「アンドン」は、T生産方式を支える有力な手法として、「カンパン」とならんで欧米にまで広く知られていますが、このランプ付きの掲示板を物理的に工場に導入したとしても、すべての企業が「T」並みの高い品質と効率的な工場運営を実現できるわけではありません。
すなわち、課題や論点が可視化(見える化)されたとして、それにどのように対応するかが結果を左右するのです。
この例からもわかるように、「戦略系コンサルティング・ファーム」が提示する優れたフレームワークとそこに描かれるきれいなチャートや図表は、それ自身には、決定的な価値はありません。
一方で、さまざまな事象を、洗練された切り口で切り取って見せる。
すなわち、「可視化する」ことは、問題を明確にし、論理的な解決に結びつける手助けになることは事実です。
また、第1章で見たように、政府や大企業は、「外資系コンサルティング・ファーム」にこうした「問題抽出能力」に加え、「ベスト・プラクティス」そのテーマについての最善手を知っていることを期待しています。
将棋の定跡や囲碁の定石のように、ビジネスの課題や組織運営上の問題においても、過去の経験則から、おおよその解決策を知っていることが、コンサルティング・ファームには期待されているわけです。
しかし、問題を抱えた企業に、過去の経験則がそのまま当てはまるかどうかは、疑問です。
問題の背景や置かれている環境などが違えば、「解」も違う可能性があります。
また、かりに、その「解」が正しくても、それが企業価値の向上に結びつくとは限りません。
なぜなら、過去の経験則から導き出された処方筆であれば、すでに多くの患者。
すなわち、ライバル企業が服用しており、コンサルティングを受けた会社の病状はほかの会社と同程度にしか回復しない、すなわち、ライバル会社を凌駕することはできない可能性が高いからです。
このように、「戦略系コンサルティング・ファーム」にクライアント(顧客)側が期待する「問題抽出機能」と「ベスト・プラクティス伝達機能」については、それぞれ限界や前提条件付きのものであることを認識する必要があります。
すなわち、「問題抽出機能」に関しては、それ自体は期待できるが、明確化され可視化された課題にどう対応するかは別問題であること、「ベスト・プラクティス伝達機能」については、それが特効薬となるとは限らないことを理解することが重要なのです。
したがって、「戦略系コンサルティング・ファーム」の付加価値について、「コンサルは何でも知っているし、解を見つけてくれる」と過度に期待するのは誤りですし、一方で、「彼らに、現業はわからない。
頼んでも時間とお金の無駄だ」と頭から否定するのも正しい態度とは言えません。
クライアント(顧客)側としては、あらかじめ認識しておくことが重要です。
それでは、私たち普通の市民は、外資系を中心とする「戦略系コンサルティング・ファーム」に対し、どのような立ち位置を取ればよいのでしょうか?彼らから何を学び、「コンサル至上主義」と言われる現代をどのように生きていけばよいのでしょうか?最終章でその答えを探っていきたいと思いますが、その前に、「コンサル至上主義」の持つ「落とし穴」に、はまった例をいくつか見ていくことにしたいと思います。
「問題抽出機能」と「ベスト・プラクティス伝達機能」については、それぞれ限界や前提条件があります。
さて、第3章では、「マッキンゼー」と「ボストン・コンサルティング」が開発し、実際の経営戦略の検討の場でよく用いられているいくつかのコンセプトや分析の手法について、見てきました。
彼らの手法は、それ自体が圧倒的な価値を生んでいる、というよりも、さまざまな事象を洗練された切り口で切り取って見せる。
すなわち「可視化する」ことにより、問題を明確にし、論理的な解決に結びつける手助けをするものであることを見てきました。
この第4章では、「コンサルティング・ファーム」の優れた点だけでなく、その限界や問題点についても明らかにしていきたいと思います。
まずは、「戦略系コンサルティング・ファーム」発祥の地であり、「コンサル先進国」であるアメリカの事情から見ていきましょう。
アメリカにおいては、近年、企業と「コンサルティング・ファーム」との関係について、批判が行われています。
その最大の論点は、「コンサルティング・ファームからの助言は、支払ったコンサルティング料に見合うだけの価値があったのか?」という点であり、株主などのステーク・ホルダー(利害関係者)からこうした疑問が経営者に対して提起されるケースが目立ってきました。
たとえば、日本のNにあたる全米最大の情報通信会社Aでは、1989年から94年までの聞に、五億ドル(50O億円強)近いコンサルティング料を支払っていることが、同社が連邦通信委員会(FCC)に提出した年次報告書から明らかになっていますこうした巨額のコンサルティング料を支払ったにもかかわらず、業績が回復しなかったことについて、多くの批判が寄せられています。
一方で、苦境にあえぐAの悩みにつけこんで、巨額の報酬をせしめた「コンサルティング・ファーム」にも、批判の目と羨望のまなざしが向けられているのです。
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